権利擁護
知的障がいのある人たちの権利擁護に向けた取り組み
会員施設・事業所の皆様へ
厚生労働省が公表した平成29年度の障害者虐待の報告によれば、障害福祉サービスを提供する施設・事業所においてあってはならない支援者等による虐待が464件あり、その7割は知的障がいのある利用者となっています。言葉による反論や抵抗が難しい知的障がいのある利用者は、最も権利侵害を受けやすい人たちです。
利用者の権利を擁護すべき支援者による虐待は、本会の社会的信用に関わる重大な事態であり、私たちは第一義に虐待の根絶に取り組む必要があります。
虐待や不適切な支援はなぜ起きるのか、その要因は何か、利用者への専門的な支援を行う集団として分析し、必要な対策を提示する必要があります。現場において支援者の心のケアや支援に必要なスキル、知識の習得、チームで支える視点、そして施設長・管理者のスーパービジョン等、総合的な対応が求められます。
本会では、平成9年に「倫理綱領」を定め、平成11年には「知的障害施設職員行動規範」、その後も、書籍「よくわかる知的障害のある人たちの人権―施設に働くあなたの疑問に答えるQ&A集―」や、パンフレット「許さない、障害者への人権侵害!」等の作成を通じて様々な取り組みを行ってきました。その活動を次につなげ、より良いものにするために、これからは本会の人権・倫理委員会、地方会の人権・倫理委員会、そして各施設・事業所が一体となって利用者の権利擁護に取り組まなければなりません。
そして、近年注目を浴びる知的障がいのある人の意思決定支援を積極的な権利擁護の取り組みとして位置付け、虐待の根絶、利用者へのサービスの向上につなげてまいりましょう。
権利擁護は、私たち支援者が目の前の利用者一人ひとりをかけがえのない存在として心から尊重するところから始まります。皆さん、力を合わせて利用者の権利擁護に取り組みましょう。
令和元年9月
公益財団法人 日本知的障害者福祉協会
会 長 井 上 博